月例会見学ご希望の方々へ

見学希望の方は、11月17日(水)まで、添付「Web申し込み書」に必要事項を記入の上、下記例会委員専用アドレスへ添付してお送り下さい。
entry@washiken.sakura.ne.jp
また、事務局宛に「FAX申し込み書」(03-5685-7780)でお申し込み下さい。見学詳細はこちらからご連絡いたしますので、必ずご連絡先を明記して下さい。もし明記がない場合は受付できません。なお、当日見学代として1,000円ご用意下さい。また、見学者が多い場合はお断りすることもありますので、お早めにお申し込み下さい。

FAX 申し込み書<Wordファイルです>

◆ 11月月例会
日 時:11 月17日(土)13:30 ~17:00
会 場:小津和紙本社ビル 6階会議室
13:00 ~ 13:30 フリートーク
※会員相互の情報交換の時間としてご利用ください。
13:30 ~ 14:40 第17 回宍倉ゼミ宍倉佐敏 会員(下記参照)
14:40 ~ 14:50 休憩
14:50 ~ 16:40 「紙は時代の目撃者:
紙の科学分析が語る知の文明の歴史」
江南 和幸 招聘講師(下記参照)
16:40 ~ 16:50 事務連絡
16:50 ~ 17:00 片付け・退出

第17回 宍倉ゼミ            P C・DMS・プロジェクター使用
題 名『唐紙・和紙・洋紙の歴史と各紙の共通点と相違点 』
  「第二回 和紙の歴史」   女子美術大学特別招聘教授 宍倉佐敏 会員

紙が日本へ伝来した頃に聖德太子は次の政策を表した、1) 税の徴収を行い公家たちに管理させた、2) 民に仏教思想を伝道する目的で僧侶に写経を起させた、この二点の影響で紙の需要は大幅に拡大した。
日本製の紙( 和紙) は原料の麻, 楮などが不足し、雁皮など短い繊維で補い水漏れが遅いので流した結果、「流し漉き法」の上質な紙が生まれ後世ではこれを和紙と呼んだ。
雁皮の粘性を知り、和紙独特のネリを使った装飾紙が生まれ、唐風文化の伝来と言われる唐風色付紙から、和風文化と言われる装飾手漉き和紙が生まれ貴族たちに好まれた。
武家が社会の中心になり、質実剛健を旨とする武士達は貴族階級が好む「白く大きく厚い」紙よりも、薄くて小さく少量のチリがあっても安価な実用性の高い紙を求めた。
庶民層も文字を書き読む社会になると、書写材以外にも建造物や生活用品・衣類などにも紙が使われ和紙の品種と共に需要が急激に増大した。江戸幕府が崩壊して藩の役人や紙商人に支配され、「つくらされる紙」から、自らの紙を造り出す「つくる紙」の時代に変わったが、職人的苦労は増した。

※このテーマにつきましては、9月より、全3回の講義となります。レジュメは11頁に及びます。9 月15 日の第一回ゼミにご参加の方は、その時に配布しておりますので忘れずにお持ちください。

講師・会員発表
題 名 「紙は時代の目撃者:紙の科学分析が語る知の文明の歴史」
   龍谷大学古典籍デジタルアーカイブ研究センター 江南 和幸 招聘講師 

紙と印刷術とが,知識の光を市民階級に広げ,現代に続く知の文明の社会を作り上げたとは,「百科全書」の著者の一人ディドロの説くところであるが,2B.C. の「ぼろ布」起源の原初製紙術に始まり,後漢105A.D. には植物繊維から直接紙を作る製紙術を完成させた古代中国,そこから製紙術を伝えられた,ベトナム,高句麗,日本のアジア諸国は,ディドロの認識のはるか以前から紙の恩恵を受けて,中世の闇に沈むヨーロッパ諸国をしり目に,はるかに高い知の文化を享受していた。この事実を中国・日本の古文書・古典籍に使われた用紙の科学分析から探る。
1:中国の多様な古文書用紙。
2:中央アジア諸民族へ広がった製紙術と諸民族の文化的発展への寄与。
3:アジアへ伝えられた製紙術とアラブ・ヨーロッパへ伝わった「ぼろ布」起
源原初製紙術との違いの謎を解く。
4:ヨーロッパ諸国のアジアの紙との邂逅。
5:中国明時代の出版文化と,「世界の1,2 を争う」江戸時代の出版文化とを
支えた紙。

1 大谷コレクション敦煌経典用紙の例・大智度論丁寧に打紙された構(梶の木)紙。MS00529,718 年
2 大谷コレクショントルファン師団兵役文書の藍染布混8世紀中期MS03028
3 大谷コレクショントルファン師団兵役文書の藍染布由来用紙8世紀中期MS03028
4 百万塔陀羅尼甲巻 楮溜漉用紙764〜770 京都博物館蔵
5 Hermitage Rembrandt Rovinsky Collection:235357 Jan Lutma, Goldsmith.1656に使われた日本の雁皮鳥の子紙。矢印は米粉
(1〜5の画像は江南撮影)

 

発表者プロファイル
1940 年生まれ。1965 ~ 1990 年まで大阪大学工学部勤務(金属材料学)。1990 年より龍谷大学理工学部勤務,2018 年退職。その間2000 年より現在まで,古典籍デジタルアーカイブ研究センター研究員として,大谷コレクション敦煌・トルファン将来古文書用紙,龍谷大学図書館蔵中国漢籍用紙,東洋文庫ヨーロッパ刊本用紙の科学的分析を継続中。