月例会見学ご希望の方々へ

見学希望の方は、416日(水)まで「添付申し込み書」に必要事項を記入の上、事務局へ月例会担当の日野宛にFAX03−5685−7780)でお申し込み下さい。見学詳細こちらからご連絡いたします。なお、当日見学代として2,000円ご用意下さい。
また、見学者が多い場合はお断りすることもありますので、お早めにお申し込み下さい。                         FAX 申し込み書<Wordファイルです>

4月例会  
日 時:419日(土)13301700 会 場:小津和紙本社ビル 6階会議室
13301430 原典講読 「造紙説 越前紙漉図説」  増田勝彦 会員
14401610 会員発表 「日本美術の構造と和紙の位置」(下記参照)    
16101620 休憩 
16201650 調査報告 「吉野商店『和紙資料館』」 (下記参照) 
16501700 事務連絡・片付け・退出会員発表

 

会員発表
題名「日本美術の構造と和紙の位置」   朽見行雄 会員  

 
 昔はただ紙と言われていたに違いない和紙も、今は工芸品と呼ばれています。和紙は芸術品とされている日本画とは、様々な理由で切り離せない存在です。とすると和紙は芸術品として一段格が上がったのでしょうか。それとも日本画の中で、ただ使用されているだけなのでしょうか。
一般的に日本画は支持体・基底材と呼ばれる紙の上に描かれ、その後、表装された状態になって鑑賞されます。しかし私の調べが不十分なせいか、日本画の構造にまで立ち入って基底材とは何か、どこまでが基底でどこまでが画なのか等について、正面から取り組んだ研究を見つけることは出来ませんでした。また表装の意味や役割、作品との関わりをどのように考えればよいのか、和紙はそのための単なる素材・材料なのか等についても、同様でした。
どちらかと言うと、和紙は日本画の支持体・基底材あるいは表装の材料として決まっていて、作品の内容、ましてや芸術性とは関係ないものであり、その位置や役割は論ずるにも値しない事、だったかのようでもあります。
一方、ヨーロッパの美術研究者の間では、長い年月をかけて、西洋絵画作品の素材・基底材という言葉で呼ばれて来たものの役割などの研究・分析が行われています。また作品を囲む額縁等、作品の周辺にある物事に、parergon(ギリシャ語)という呼び名の概念を設定した上で、様々な研究が行われて来ました。そこには、今までの日本美術研究の世界から見ると、思いもよらない多様な考え方がある事に驚かされます。
和紙や表装は日本画が作品として存在する為の欠かせない物体、という事は誰でも知っています。しかし西洋での研究と、日本での様々な関連研究を重ね合わせてみると、和紙は支持体・表装としては勿論ですが、日本画の芸術性が形成される上でも、重要・不可欠なものと考えられます。
実は西洋絵画に比べて日本画は様々な意味で、より複雑な重層的構造を持つ芸術であり、それだけ和紙や表装の役割をより深く考える研究が必要だったのではないでしょうか。そして日本画を芸術として成立させているのは、アーチストと呼ばれる作家一人ではなく、実は和紙作りや表装をする人もまた、アーチストとして参加しているのではないか、などとは考えられないでしょうか。
今まで和紙研では紙や表装、他に墨、筆、顔料、箔など多種多様の構成要素について、様々の実証的な研究が行われました。それぞれに西洋画にはない重要な役割を担っているものです。今回は発表を「素材としての和紙」、「parergonと表装」、「和紙の力」の三つに分けて、内外の研究や論文などを比較検討しながら、日本画における和紙の位置や、表装の持つ意味、和紙や表装の新しい位置付けの可能性について考えてみたいと思います。4月19日の発表では一番目のテーマである、「素材としての和紙」を中心にする予定です。

参考映像

松林図屏風

「松林図屏風」(左隻)国宝  長谷川等伯 
東京国立博物館蔵日本人の最も好きな日本画に選ばれた事もある等伯の代表作。余白が途方もなく大きい。また表装をやり直し、画の構成まで変えていると言われている。今回の研究発表に大きな示唆を与えてくれる。

美術書に掲載されている額縁

 

 

「美術書に掲載されている額縁」          ナポリ・ドゥーカ・ディ・マルティーナ美術館蔵
『イタリア人に学ぶ日本人が知らない名画の見かた』(ダニエラ・タラブラ著)から」
 中世以降のヨーロッパ中の美術の名作を集めた画集に、18世紀シチリアで作られた
額縁が、一つの美術作品として紹介されている。日本画の画集で、表装がこのように扱われた事はない。

【発表会員プロフィール】
和紙文化研究会会員 1934年生。1959年NHKに入局し、報道番組の制作等に従事した。退職後の1990年にイタリアに渡り、イタリア各地の伝統工芸や工芸職人等について取材した。著書『フィレンツェの職人たち』(JTB出版・1993年、講談社文庫・2007年)、『イタリア職人の国物語』(JTB出版・1996年)など。論文「周防岩国藩に於ける和紙専売制について」(國學院大學文学部卒業論文・2012年)。

 

調査報告
題 名「吉野商店『和紙資料館』」          白井麻美 会員    

 埼玉県比企郡小川町にある吉野商店『和紙資料館』は、古典籍・古文書、工芸品など近現代までの和紙及び関連資料が展示収蔵されています。
 閉館にあたり、資料を小川町に寄贈できる状態にするため、20123月から201312月にかけて目録作成のための調査を行いました。調査内容及び結果をご報告いたします。

1外観

1 外観〈資料館は緑に囲まれた静かな住宅街にあります〉

2内観

2 内観〈館内には様々な資料が数多く展示されています〉

3作業風景

3 作業風景〈館内の図面を作成した後、展示ケースごとの員数調査から始めました〉

4作業風景

4 作業風景〈全10回の調査のうち、記録用紙に書名や著者名などを記入する書籍調査が大半を占めました〉

Photo by GENJI Koikawa

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