◆会員情報

報告会

“筑後の伝統工芸展”を終えて             狩野啓子会員関連

 5月に久留米大学比較文化研究所 文化財保存科学研究部会は国際交流基金の助成の内定を受け「久留米大学 文化財保存科学研究部会(日本文化紹介:筑後伝統工芸)イタリア レクチャー・デモンストレーション・ワークショップ」と題する事業(筑後の伝統工芸を紹介)を、イタリアのローマとフィレンツェで開催されました。
 その報告会が八女伝統工芸館で7月7日に行なわれました。

 

八女報告会チラシ

 

◆新刊情報

武田政子の博多演劇史 『芝居小屋から』
                          狩野啓子 会員関連
著者:武田政子…J…o†[−Ö„W.eca
編者:狩野啓子・岩井眞實
定価:本体2500円+税        
版元:海鳥社
発売:2018年6月20日
判型:四六判
装幀:上製・カバー
頁数:246ページ
海鳥社HP http://kaichosha-f.co.jp/
書籍P http://kaichosha-f.co.jp/books/literature-and-record/4771.html

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編者序文                             狩野啓子

 

 人との出会いによって、何かが展開することがある。武田政子さんとの出会いは、

私にとってそういう一例であった。戦後文学研究の一環として、占領政策下での博多の演劇について調べていた私を、武田さんに引き合わせてくれた人がいた。紹介

者は、産婦人科医の天児都さん。武田さんの福岡女学院時代の教え子である。

 武田さんへのインタビューの目的は、貴重なお話を伺えたことで十分達せられたのだが、武田さんの話はそれにとどまらず、どんどん時代をさかのぼり、明治の博多の芝居について、まるですぐそばで見ているような臨場感をもって、生き生きと繰り広げられた。その知識と話術に魅了された私は、もっとお話を聴きたくなった。

 武田さんが博多の芝居に詳しいのも不思議ではない。政子さんの父親は、大博劇場の経営にたずさわった武田米吉さん。祖父は武田与吉さん。明治時代からの博多の芝居に非常に縁の深い方だったのである。政子さんも小さい頃から、芝居小屋の空気を吸って育った。

 夕御飯がすんでから普段着のままで気軽に見物に行ったお芝居の楽しさを、武田さ

んは昨日のことのように語った。呉服町近辺は今のように早々と暗くはならなかったそうである。

 武田さんの芝居通いは、上京して、お茶の水の東京女子高等師範学校に在学中も続いたという。帰郷後は数年教壇に立った後、劇場運営を手伝ったが、昭和二十一(一九四六)年以降は福岡女学院に戻り、昭和四十七年の定年まで国語の教員として大勢の生徒を教えてこられた。

 退職後、大博劇場のことを調べておきたいという強い思いから、当時須崎にあった福岡県立図書館に通って新聞を読み、関連する記事をノートに書き写す作業を始めた。そのうち、大博劇場にとどまらず、明治以降の博多の芝居について、できるだけ正確に調べてみたいと考えるようになり、東京の国立劇場等にも通い、ノートは膨大なものになっていった。

 そのようないきさつをお聞きし、十冊を超えるノートと、「芝居小屋から」と題する文章の構想を拝見し、これは大変な仕事だと思った。とにかく何とか仕上げていただきたい。埋もれてしまうのはあまりにももったいない。江戸の名残をとどめながら、近代化のきざしも表れてくる明治時代の状況は、私自身がぜひ勉強したいところでもあった。近代は近世と切断されてはいないのだから。毎回わくわくしながら武田さんの話に耳を傾けることから、仕事が始まった。…後述略