◆第6回ミニ研修会のおしらせ

和紙研では和紙及びその周辺のものを、現場に行って学ぶ研修会(旅行)を行なっております。その中で首都圏を主に日帰りタイプを「ミニ研修会」として、今回が6回目となります。会員以外の参加も受付けておりますので、気軽にご参加下さい。

「一見! 必見! ふすま紙の世界」
        
日 時:5月12日(木)13:00より
訪問先:株式会社 菊池襖紙工場 (埼玉県草加市新里町1355 ℡ 048-925-1245) 
http://www.fusuma.co.jp/corporate/overview.html

見学内容と予定: 
加工工程全般・伝統工芸室等の見学 工場長のご案内、説明で2時間ほど
集合場所:竹ノ塚駅改札口(東武伊勢崎線)
  時間:12:10 (バス乗り場 西口西友前)
  12:23 発 新里循環 上町下車
研修費:不要
※ 見学の機会は滅多にないとおもわれます。平日ですがこの機会にぜひご参加ください。
※ 会員以外の方は5月6日まで必ず小井川までご一報下さい。なお、連絡のない場合は参加できません。
問合せ:小井川元慈 ℡044-788-7261

 

◆和紙情報

各地の和紙を次世代につなぐために 
ー 遠野(福島県いわき市)と徳地(山口県山口市)でガンバル地域おこし協力隊 ー
「地域おこし協力隊」とは、国(総務省)の取組みで「制度概要として都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を移動し、生活の拠点を移した者を、地方公共団体が「地域おこし協力隊員」として委嘱。隊員は、一定期間、地域に居住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・ PR等の地域おこしの支援や、農林水産業への従事、住民の生活支援などの「地域協力活動」を行いながら、その 地域への定住・定着を図る取組。」と発表されています。活動期間は概ね1年以上3年以下、特別交付税により財政支援 1地域おこし協力隊員の活動に要する経費:隊員1人あたり400万円上限とするものです。
詳細は以下総務省HPを御覧下さい。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/index.html
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/02gyosei08_03000066.html
 平成27年度は全国で隊員数2,625人、664市町村で活躍しています。その中で和紙の継承や再生に取組む産地から、2ヶ所、現在和紙作りと格闘中の山口市徳地和紙協力隊と来年度の募集を始めたいわき市遠野和紙の紹介をします。

 

特集「技術継承を目指す地域おこし協力隊の活動『山口徳地手漉き和紙』編」
(HP3回特集)
 昨年春に山口市地域おこし協力隊となった船瀬春香(ふなせはるか)さんにお願いをして、ご本人の体験を通して和紙と地域おこしについて3回にわけて語っていただきます。船瀬さんは現地に行く前に、それまで和紙が身近になかったことから、できるだけ多くの和紙とその内容や状況を知って現地に臨もうとし、昨年3月に和紙研の例会も見学され、他に和紙産地・工房、博物館や展示館に赴き、関連展覧会やイベントを観覧し、関連資料などから様々ことを学ぼうとし、自分が進もうとするところへできるだけ準備をして行こうとしておりました。その姿を知りこの特集のお願いをしました。経験を踏まえていただくために2・3回目は、間の時間をとって夏(7月)・秋(10月)の予定ですが、作業状況によって月が変わるかもしれませんのでご了承下さい。
 全国の歴史的和紙産地には同じような状況があると思いますし、これらの制度も利用して、何とかの次世代にその土地の和紙を伝えていけることを願っています。和紙作りの現実は大変だと思いますのでエールを送ってあげて下さい。(HP担当日野)

 

第1回「徳地和紙紹介と協力隊参加」
                 山口市地域おこし協力隊 船瀬春香

800年以上の歴史をつなぐ徳地和紙

徳地を流れる佐波川(さばがわ)
①徳地を流れる 佐波川I
「徳地(とくぢ)和紙」をご存知だろうか。山口県山口市の中山間地域である徳地に伝わる手漉き和紙だ。鎌倉時代初期、源平の戦いで消失した東大寺の再建用木材を求めて徳地を訪れた、重源上人により伝えられたとされている。(実際にはもっと古くから紙漉きが行われていたとも言われている)
江戸時代には毛利氏の「三白政策」(※下記参照)の下に紙漉きが奨励され、生産量も技術も向上、明治34年には4,388戸が紙漉きに携わっていたが、洋紙の普及で一気に衰退した。それでも徳地和紙は消滅することなく、現在も、「千々松和紙工房」の千々松哲也氏(山口市指定無形文化財)、「山内農場」の山内幸彦氏、「重源の郷」の粟屋香澄氏が徳地和紙を漉いている。
 また、平成26年には地域の有志による「山口とくぢ和紙振興会 結の香」が発足した。

栽培されている三椏
②栽培されている三椏 syou

地図
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サラリーマンから和紙職人に
 歴史ある徳地和紙を守り継いでいくために、山口市は平成27年に嘱託職員2名(「地域おこし協力隊」)を採用した。その一人は千々松哲也氏の息子さんで、大阪からUターンした千々松友之氏、もう一人が東京から移住した私だ。

③楮のそぶり(皮剥き)作業 左:千々松友之氏、右:船瀬春香
③楮のそぶり(皮剥ぎ)作業左:千々松友之氏、右:船瀬春香 syou

 

④そぶり道具
④楮のそぶり道具

 

千々松友之氏と私は共に40代。二人とも会社員生活から一変し、徳地和紙の伝統と技術の継承を目指して和紙作りを学び始めたが、当初の私は原料や道具の名称さえ分からない状態。千々松哲也氏と山内幸彦氏に、原料を煮るための薪割りや火おこしから教えてもらうことになった。
 木の皮がほどけて繊維になっていく変化に関心し、トロロアオイの粘りに驚き、簾桁ですくった水の重さに面食らいながらの作業だ。初めて漉いた楮の障子紙は、ムラがあって乾燥時にうまく扱えず、全て破けてしまった。今もわからないことばかりだが、木の繊維を美しい紙に仕上げる先人の知恵と技を、身を持って学べることに喜びを感じている。

⑤千々松友之氏、乾燥中の楮 
⑤千々松友之氏、乾燥中の楮 shou

⑥原料の煮熟 
⑥原料の煮熟 

⑦楮の煮熟後の晒し 
⑦楮の煮熟後の晒し

⑧紙漉き(楮の障子紙) 
⑧紙漉き(楮の障子紙)

⑨地元の木工所に作ってもらった名刺簾桁
⑨地元の木工所に作ってもらった名刺簾桁I

 

なぜ手漉き和紙の世界に飛び込んだのか
 東京で20年間オフィスワークをしていた自分が、なぜ山口に移住して手漉き和紙に関わろうと思ったのか。その理由は、「日本と海外をつなぎたい」という思いと「ものづくりへの憧れ」だ。
 私は学生の頃から英会話が好きだったので、英語を使って日本と海外の架け橋になるような仕事をしてきたが、いつ頃からか、ものづくりへの憧れを持つようになっていった。また、新聞や雑誌などで日本の伝統産業が後継者不足に悩み、消滅の危機にさらされているという記事を読むたび、自分にできることはないかと思っていた。しかし、具体的にどうすればいいかはわからず、年齢的にも職人に弟子入りするには遅いと思っていた。
 そんな中、地域おこし協力隊が「徳地手漉き和紙の技術継承者」を募集していることを知り、これはチャンスと迷わず応募した。
 とは言っても、実は、「手漉き和紙」に特段の思いを持っていた訳ではない。応募を決めてから和紙専門店を覗き、紙漉き体験もしたが、自分の生活に和紙製品が一つも含まれていなかったことにショックを受けたほどだ。
 ただ、子供の頃から色々な種類の紙を集めてカードやアルバムを手作りしていたし、紙と文字と立体物を組み合わせたコラージュがとても好きなので、「紙」という素材が、他のものよりも好きなのだと思う。
 改めて考えると、私にとって、「ものづくりへの憧れ」は、自分の手で美しいものを生み出せるようになりたいという願いだ。それができたら、美しいものを通じて日本と海外をつなげていきたい。この二つの願いを叶えたいと思って、手漉き和紙の世界に飛び込んだ。
 今後の連載を通じて、徳地の魅力や徳地和紙の今、地域おこし協力隊の活動、山口の和紙スポット等を紹介していきたい。
 最後に、私が地域おこし協力隊に応募しようと思ってから和紙の勉強を始めたところ、和紙文化研究会とご縁が生まれ、このような形で情報発信の機会を頂いた。心より御礼を申し上げたい。

⑩3月下旬の佐波川 
⑩3月下旬の佐波川I

※ 三白政策とは
江戸時代に、毛利藩が藩財政強化のために行った殖産政策で、米、紙、塩の「三白」(櫨蝋を加えて「四白」とも言う)の増産を図った。

 

工房の場所(Google map)(工房は「山口観光コンベンション協会徳地支部」に併設・常勤していません)
https://www.google.co.jp/maps/place/ 山口観光コンベンション協会徳地支部

 

遠野和紙へ協力隊求む
 「遠野和紙」は、クワ科の楮を100%使用した手漉き和紙で、丈夫で、2年、3年と経過するにつれ、より白くなるという特徴がある伝統的和紙です。遠野地区では約400年前から紙漉きが行われており、江戸時代には「磐城延紙」のブランドで、江戸に出荷されていました。古くは武家の記録用紙や障子紙に使われ、現在では地区内の小・中学校、高校の卒業証書や市政功労表彰状などに用いられています。
 しかし、1973(昭和48)年には遠野地区に漉屋が1軒のみとなり、1986(昭和61)年、「いわき和紙製作技術」として、いわき市の無形文化財に指定となるものの、2014年に技術保持者が亡くなったことにより、指定が解除され、その伝統の技が途絶えようとしていることから、「遠野和紙」の制作技術の習得、継承に意欲のある人材を地域おこし協力隊として募集することしました(協力隊募集はH27年度から実施しています)。     〔いわき市地域振興課〕

募集人員:2名 20歳以上 男女不問
賃金:月額160,000円(賞与年2回、各0.25ヵ月)
雇用期間:採用決定後から平成29年3月31日まで(予定)最長平成31年3月31日まで延長可。
受付期間:平成28年4月1日(金)から5月10日(火)まで
他に諸条件がありますので以下に問合せ下さい。
いわき市市民協働部 地域振興課(〒970-8686 いわき市平字梅本21番地  TEL0246-22-7414)
http://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1458088327708/index.html

 

◆和紙情報

第1回「三井ゴールデン匠賞」の受賞   杉原吉直氏 (株)杉原商店 関連
会員会社を25社有する三井広報委員会は、日本の伝統工芸において、多くの課題がある中で、古来の技法や様式を継承しつつ、革新的なアイデアを取り入れ、さらなる発展に貢献されている方々がおり、そんな「伝統×イノベーション」の担い手に注目と称賛が集まる機会を創りたいとして創設されたのが「三井ゴールデン匠賞」です。この度、第一回の受賞に越前和紙の杉原吉直氏が決まりました。
受賞者:越前和紙/福井県越前市 杉原 吉直氏(すぎはら よしなお) 株式会社 杉原商店
杉原さんのコメント
越前には紙漉きの職人がたくさんいます。デザイナーもいます。私は職人ではなく彼らを結ぶ架け橋ですが、今回、このような賞をいただき本当にありがたく思っております。これを励みにますます頑張りたいです。
主催 三井広報委員会
後援 経済産業省、一般財団法人 伝統的工芸品産業振興協会
特別協力 読売新聞社、宣伝会議  
http://mgt.mitsuipr.com/winner/

◆会員情報

展覧会「よみがえる仏の美 修理完成披露によせて」及び講演会「文化財修理の現状~静嘉堂絵画の修理から~」      半田九清堂関連 関連
展覧会
会場:静嘉堂文庫・美術館
期日:2016年4月23日(土)~6月5日(日)
講演会
日時:2016年5月14日(土)午後1時30分より開始
場所:地下講堂
題目:「文化財修理の現状~静嘉堂絵画の修理から~」
講師:坂田雅之氏((一社)国宝修理装?師連盟理事長)半田昌規氏(㈱半田九清堂代表取締役社長)
坂田さとこ氏(㈱坂田墨珠堂代表取締役社長)吉岡宏氏(㈱文化財保存代表取締役社長)
人数:先着120名様(開館時より整理券配布予定)
※講演会は、10時から配布する整理券がないと入場できませんので、参加希望の方はご注意下さい。
http://www.seikado.or.jp/exhibition/next.html
展覧会では「木造十二神将立像」のうち4軀をはじめ、修理を終えた仏画普賢菩薩像」を初披露。同時に作業の際に使用する材料や道具もともに展示。また、伝 張思恭「文殊・普賢菩薩像」、「百万塔陀羅尼」は静嘉堂所蔵の全40基を一堂に公開いたします